序
何事にも時があり、 天の下の出来事にはすべて定められた時がある。 生まれる時、死ぬ時 植える時、植えたものを抜く時 殺す時、癒す時 破壊する時、建てる時 泣く時、笑う時 嘆く時、踊る時 石を放つ時、石を集める時 抱擁の時、抱擁を遠ざける時…
第1話 誓言
講堂はざわめいていた。もはや誰も講師の話に耳を傾けてはいないのではと思えるほどに、みなそわそわとして、しかし実に楽しそうにおしゃべりに興じていた。「静かに」 ときおり、講師は怒りを隠しながら注意する。すると、いったんは静けさが戻るのだが、…
第2話 夜半
かくして夜は更けた。 教科書をぱらぱらとめくるうちに、屋敷は静まりかえっていた。月佳はぼんやりした頭を覚まそうと、窓を開けて部屋に風を入れた。目が疲れていたので、夜空を見やる。 今夜は月が出ていない。いや、出ていないというよりも、今宵は三…
第3話 喧噪
翌日、学院は祭前日の休校で、寝過ごした月佳は昼ごろ街へ出た。 祭は本番よりも準備期間のほうが楽しいというがまさにそのとおりで、街じゅうが異様なまでの活気に満ちており、見ていて飽きなかった。ディアークは今日は、祭前日にもかかわらず、棒術の稽…
第4話 祭日
パリリア祭の主な催しものは正午過ぎに始まる。中央広場に特設されたテントでの喜劇や、舞踊団の公演などだ。けれど、午前中は午前中で、街中で砂糖菓子が配られ、そこここで祭ならではの遊戯が行われる。月佳の通うエトルリア士官学院の運動場も、その日だ…
第5話 婚約
少年は、大勢の女官に、なかば押しつぶされる格好で着つけられていた。 少年の立場にふさわしい盛装を、彼はたいそう嫌って逃げようとするのである。武術に通じている少年を、これまた武術に通じた女官が四人がかりで押さえこむ。少年が身動きできないうち…
第6話 決闘
ヘイゼルグラント邸からエトルリア士官学院に行くには、必ずエトルリア中央広場を通り抜けなくてはならない。 パリリアの翌日から授業が再開されたので、月佳はその日は学院に行った。授業は午前中から正午にかけてと、昼休みをはさんで夕方までである。当…
第7話 欺瞞
――それで、カイはどこの誰なんだろう。それがわからないことには、結婚なんかできない。 もはや無駄なものとなった士官学院の授業を終え、月佳は中央広場に走った。 右の頬には湿布が貼られている。朝になってみると、昨夜にまして腫れていた。引越しの…
第8話 儀式
月佳の儀式の日が近づいている。 カイに話を聞いたところ、「偶然にも」、カイと月佳が儀式を受ける日どりは同じであった。しかも、カイはかのマルクトとともに元服するという。しかし月佳はふたつの「偶然」を驚きもしない。それが定められていたことで、…







