「なんかサイダー飲んでるのうれしそうに見てるんですけど……」
「フードコードのチケットは失敗だったわね! マネージャー。あたしはシファ・アーマディーを見てヤニさがってるサイレを見たかったわけじゃないんだけどー?」
「申しわけございません。イヴさま」
〈ワールド・アトラティカ〉側の責任者が頭を下げている。いくら市長の娘だからって、市長は独裁者ではないのだから、そこまでする必要はない気がするが、マネージャーはごく真剣だ。
「ですがイヴさま、水をかけてお詫びもしないでいれば、当園の対応を問われます」
「園のできることには限界があるものね。評判を下げるわけにはいかないし」
イヴはいつになく居丈高に胸をそらせたが、気づかいはやさしい。
「でもイヴさま、このあととっておきがございます」
「期待していいのかしら?」
「ご期待ください!」
マネージャーはもみ手する。ふふんとイヴは鼻を鳴らす。なんだか楽しそうだ。
もう一人の友人ラケルタはといえば、相変わらずイヴの端末に映しだされたサイレとアーマディー女史の姿に釘づけで、二人の一挙手一投足に目を凝らしつづけていた。
「あの、どうしてVIPの娘だからってこんな小娘のいうこと聞いてくれるんですかね」
堪えきれず、アイバンはマネージャーに訊く。「別に市長がここ運営してるってわけじゃないですよね。こんなムチャぶり、断ったって別に困ることにはならないでしょ?」
こらぁアイバン、邪魔しないでよ、とイヴが騒ぐ。そんな市長の娘の言葉にいちいちうなずいてから、マネージャーはアイバンを見た。
「はい、でもクロカワ市長が当園の恩人であることに変わりはございません。クロカワ市長がトリゴナルを築きあげる際に苦心されたことは無数にあります――それはもう、人生の大半を賭けられたわけですから。当園の建設もそのひとつ」
「でもこう言っちゃなんですけど、古風な遊園地ですよね。とりたてて驚くような技術が使われてるとは……」
「ええー? アイバン知らないの? デートしたことあるぅ?」
イヴはマネージャーの腕に抱きついて、上目づかいにアイバンをみあげてきた。図星としかいいようがない指摘に、アイバンはぐうの音も出ない。
「これからそれをお目にかけましょう。イヴさまのご要望にも適うかと」
マネージャーはほほえんだ。「なんにせよ、人の恋路を邪魔するなんて、なんて楽しいお仕事……うっふっふ」
最後には邪悪な笑みに変わったマネージャーを見て、アイバンは、訊かなきゃよかった、とひとりごちた。
