短編

曇天の娘 / 異世界ファンタジー短編

 十六歳の誕生日、ラシは側近の目を盗んで、城壁の上に立った。 見慣れた雲の下、少女は湖水の輝きとうたわれる青い眼を布で覆い、吹きすさぶ風にかまうことなく一歩踏みだした。 一歩、また一歩と城壁の上を進み、両手をのばす。 両手はむなしく空ぶって…

大英博物館のミイラ / すこし・ふしぎ系短編

 むかし、ある男が、じぶんの身体的特徴を苦にして死んだ。 男を慕う人びとは、他人からみればじつに些細な、ごく個人的な悩みのために死んだとは考えられなかった。妻子さえも、男が何らかの社会的使命を帯びた末に、無力を痛感して死んだのだと考えた。そ…

神田さん / すこし・ふしぎ系短編

 隣の貸家にはカエルが暮らしている。 かれは二足歩行し、身長は大人と同じくらいあって、矢作(やはぎ)を見下ろす。TPOに配慮した服装で街を行くが、顔も手も土色でぬめり、近づくと生臭かった。 名前は「神田さん」。神田さんが越してきたとき、近隣…