すすり泣きが満ちる葬送エリアで、イヴはアイバンとギルヴィエラとともにうつむいていた。
かたわらのアイバンは、ファンの女性たち以上に泣いている。
「サイレ、あいつ……だからちゃんとしとけって……」
言葉は、涙にのみこまれてしまう。サイレのたくさんの彼女たちも、そういう状態だった。サイレを刺したのは、いちばん最近つきあいだした女の子で、ほかのファンの子からも孤立していたという。
サイレは誰とでも望まれれば一緒にいたが、その中の誰とも心を分かちあわなかった。ほとんどの女の子は、それをわかったうえでサイレといたが、誰もが物わかりがいいわけではない。
もっとはっきり、その子が危険だといえばよかった? トリゴナルK最下層の、光量が絞られた葬送エリアで、イヴは自問する。サイレの運命は見えていたのに。ラケルタとのことが見えていたように、彼女とのこともわかっていたのに。
(星見はみるだけ。運命は変えられない)
イヴがスエンとして生きていたときも、少なからずその疑問を抱いた。年老いてからエンジュと出会ったとき、星の子どもであるエンジュの数奇な運命に、単に歌を伝えることでしか力になれないと知ったときの無力感。何ひとつ助けにならなかったことを悔やんで、イヴはサイレやラケルタを助けようとしたけれど、結局、無力だ。
――だけど。
(星神とシリウスの約束は、叶ったはず)
生け贄の少年を、飢えと渇きのなかで死なせてしまったシリウスは、母なる星神に願ったという。
――もしも、生まれ変わったあとで、彼がシリウスのことを思いだしたなら、そのときは彼のそばでただ生きて死ぬ、平凡な人間の娘にしてください。
その条件は、みずからは決して語らないこと。ラケルタはやり遂げた。サイレもまた、それにこたえた。シファの気まぐれが、そこに導いた。
(これで終わりのはずがない)
イヴは、悲鳴に近い女性たちの声に、顔をあげる。
喪服を着こんだ人々の列のあいだを、ベルトコンベアにのせられた棺が滑っていく。
棺には小さなガラス窓がついていて、顔が見えるようになっていた。目を閉じたサイレが、コンベアの流れにのって運ばれていく。
コンベアの行く先は、トリゴナルの底――〈毒の海〉の水底だ。
パンタグリュエル家のような、狭いトリゴナル内でも墓所をもっている名家以外は、こうして遺体は〈毒の海〉へ放出される決まりだった。
――サイレ。ラケルタ。
(これで終わりじゃないよね。また会うことは、できないかもしれないけど)
強化ガラスのむこうの星々の、わずかな光が語るところに、希望をかけて。
〈イヴちゃん〉
「しーっ」
〈妖精さん〉の声に、イヴは唇に指をあててみせた。
「あたしはだいじょうぶ。だいじょうぶだよ」
ラケルタは事件のあと、姿を消していた。
この葬儀にも、彼女の姿はない。
「ハッピーエンドは、あたしには見られない。……わかってるけど、さびしいね」
